「固定種」「在来種」へのこだわり

PLANTIO official
2019-04-26

「おいしい」と衝撃を受けた野菜が定種、在来種だった

ALL FARMのもう一つのこだわりが、固定種、在来種(※)の野菜を育てて提供するということです。現在、日本での野菜の栽培・流通の主流は、育てやすいF1品種(※)。そんななか、なぜ、あえて「育てるのが難しい」といわれる固定種、在来種にこだわっているのでしょうか。

農場長の寺尾卓也さんが語ってくれました。

「最初はどんな野菜を作ればいいのか、迷いがありました。そこで、ミシュランで三ツ星を獲得したシェフに手紙を書いて、『おいしい野菜を育てている農家さんを紹介してほしい』とお願いしたんです。面識もなかったんですけどね(笑)。

1か月後、山梨の農家さんを紹介していただいて訪ねたら、そこで食べさせてもらった野菜が衝撃的なほどおいしかった。その、おいしいと思った野菜や育て方を取り入れたいと思いました。それが固定種、在来種の野菜だったんです」

固定種、在来種の野菜がもつ個性の強烈さに、寺尾さんは惹かれたと言います。

「F1品種だからおいしくない、固定種、在来種だからおいしい、と思っているわけではありません。ただ、最初に衝撃を受けたのが固定種、在来種の野菜だったから、こだわりたかっただけ。どうせ育てるなら、失われつつある野菜を継承する役に立ちたいという気持ちもありましたね」

固定種のなかでも在来種は、各地の農家が育て、タネをとって次世代へと受け継いできた野菜。しかし、農業従事者の高齢化と後継者不足が進むなか、タネの継承が途絶えてしまい、失われた在来種は少なくありません。ALL FARMでは、法人として固定種、在来種を育ててタネとりを行うことで、品種を守り伝えようと取り組んでいます。

「この農場では、栽培からタネとりまで野菜ごとに担当者を決めています。スタッフはそれぞれ、自分はどんな野菜を育てたいのか考え、自身の判断基準でタネをとり、次のスタッフに伝える。そうして、タネがつながる農場になればいいなと思っています」

(欄外注)

※固定種、在来種…… 多くの株のなかから、その品種の特徴がよく現れた株を選抜してタネをとり、栽培を繰り返すことで出来上がった品種を「固定種」という。そのうち、特定の地方で栽培・継承されてきた品種を「在来種」という。その地方の名前をとって「○○野菜」「○○伝統野菜」と呼ばれることもある。

※F1品種…… First Filial Generation。異なる純粋な親どうしをかけ合わせて生まれた雑種第一代目で、「一代交配品種」とも呼ばれる。両親がもつ性質のうち、優性の遺伝子だけが現れていることが多く、生育が早い、病気や害虫に強いなど特定の性質をもつことが多い。ただし、その子どもの第二代目は親とは同じ形質にならないことが多く、タネとりには不向き。

農場のオープンから苦節5年、初めて収穫した大浦ゴボウ。千葉県匝瑳市大浦地区で栽培されてきた在来種で、太いものは直径30センチにもなる。お店では、含め煮にしてから揚げる「大浦ゴボウの唐揚げ」が大人気メニューに。

「おいしいから残したい」と思ってもらえるきっかけ作りを

個性派ぞろいの固定種、在来種。その魅力をお客さんに伝えるため、“飲食チーム”統括の古森啓介さんは「できれば丸ごと食べてほしい」といいます。

「例えば和食の世界では、ジャガイモやサトイモは皮をむくのが当たり前。でも、僕らは皮つきのまま提供します。皮ごと食べて、その野菜の個性を味わってほしいからです。食べやすさについてはあまり考えていないので(笑)、ど〜んと大きなサイズで出して、お客さんから『どうやって食べたらいいの?』『切ってください』と言われることもあります」

それぞれの野菜の個性を引き立たせるため、調理方法や味つけは極力シンプルに。サラダも、「ケールのサラダ」「ルッコラのサラダ」などというように、複数の野菜を組み合わせることはせず、その野菜が主役になるよう仕上げます。そして、その野菜が最もおいしくなる食べ方を模索するため、古森さんはありとあらゆる調理方法、調味方法で全ての品種の試作をするそうです。

「野菜のラインナップは基本的に寺尾が決めるので、届いた野菜を見て『どうしよう』って途方に暮れることもありますよ。まずは生で食べてみて、それから蒸すのか、ゆでるのか、揚げるのか。味つけは塩か、しょうゆか、味噌か。試作して、まかないで食べて、メニュー化できないうちに収穫が終わってしまったことも多々あります」

気が遠くなりそうな作業に聞こえますが、「めちゃくちゃ楽しいですよ!」と古森さんは笑います。

「固定種、在来種を継承したいなんて偉そうなことを言っても、結局のところ大事なのは、食べておいしいかどうか。おいしいと思うものなら、人は残していきたいと思うはずです。このお店は、『固定種、在来種の野菜は、おいしいから残したい』と思ってもらえるきっかけになってほしいんです」

固定観念にとらわれることなく、おいしい野菜を通して、農業や飲食店のあり方を総合的に変えていきたい。「ALL FARM」という社名には、「夢は大きく、全部やる」という古森さん、寺尾さんの熱い思いが込められているのです。

農場のオープン当初から、最もこだわってきたのがケール。アメリカで食べて、そのおいしさに惚れ込んだ古森さんが導入した。現在のケールブームの火つけ役にもなっている。
「WE ARE THE FARM」代々木上原本店の調理場には、「身土不二(その土地でとれた旬の野菜が体によい)」「一物全体(食べ物は丸ごと食べたほうがよい)」など、ALL FARMが目指すコンセプトが書かれている。