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【PLANTALK Vol.8】〜民主化から見えてくる未来〜”建築の民主化”を目指すVUILDと、”食の民主化”を目指すPLANTIOの 特別対談インタビュー

grow official
2020-10-30

人類にとって最も重要な「衣・食・住」が、従来の産業型を脱し民主化することにより見えてくる未来。 ”建築の民主化”を目指すVUILDのCEO秋吉浩気さんと、”食の民主化”を目指すPLANTIOのCEO芹澤による特別対談インタビューが実現いたしました。


いつでも・どこでも・誰でも野菜栽培を楽しめる、アグリテインメントプラットフォームサービス『grow』。growでは、自宅のベランダ、都心のビル屋上だけではなく、屋内でも野菜を栽培したい、という要望も叶います。

それが、インドアファーム。

その場所における自然の日照を正確に再現する特別設計のLEDライトと、自社開発の超軽量で虫のわきにくい専用用土。そこにIoTアグリセンサー『grow CONNECT』を挿す。組立式で簡単に設置でき、ちょっとした空きスペースと電源さえあればすぐに野菜栽培を始められる装置です。


インドアファームに込めた思い

芹澤: LEDと土とセンサーだけを提供すれば、どなたでもどこでも、あっという間にコミュニティファームができあがる。しかも天候に左右されないで野菜栽培ができるものを開発したい。そんな思いで、ぼくらは秋吉さんたちに、このインドアファームのデザインをしていただきました。

秋吉:お話をいただいたとき、設計要件にはなかったのですが、コミュニティが分解したりくっついたりすることを想定して、“移動性”を意識しました。動いて、収納して、畳める、展開できる、好きな時に育てられる、ということを目指したいなと。
六角形の形なのも、増殖できる形だからで、端部をつなげて数珠つなぎのように増やしたり、六角形だと折り畳みもしやすいんです。

芹澤:そうでしたね!プレゼンをしていただいたとき、折り畳まれた骨組みが車の荷台に積んであるパースがありました!
今まで、“不動産”と呼ばれていたものが、徐々に“可動産”になってきて、場所の価値が、本質的な“場所”の価値ではなくて、 “そこに住まう人”が作り出す価値になってきていると感じますね。

秋吉さんたちの活動コンセプトにおいても、“ムーバブルである”ということは、一つのキーポイントなのでしょうか。

秋吉:“モードを変えることができる”というデザイン思想は、持っていますね。
建築物などのハードウェアはある程度“固定”になってしまう場合が多いですが、中身の家具などは“動式”であるほうが都合がいいです。

民主化とは…

秋吉:私たちは、それぞれが思い思いに描いた暮らし、理想の家や家具を、誰でもどこにいても自由に作れる世界を目指しています。
そのために必要なキーテクノロジーとして『デジタルファブリケーション』…デジタルデータをもとにそのまま物作りができる技術があります。また、デジタルデータをもとに木材を加工する『ShopBot(ショップボット)』という機械を全国の木材のある地域へ導入し、まずはインフラを作るという草の根的な活動をしています。

ただ実際には、機械が導入されてもデジタルの物作りってなかなか難しいんですよね。デジタルツールの使い方を覚えなければいけなかったり、デザインのやり方を覚えなければいけなかったり。

最終的に目指しているのは、素人でも簡単にデジタルツールでデザインをして
デジタルデータで物作りをすること。そこで、『EMARF(エマーフ)』というツールを作っていまして、一般の人のアイデアを形にする、デザインしたい人をサポートしていく、創造性の民主化を目指しています。

芹澤:ぼくらも、自宅のプランターだけではなくビルの屋上や屋内の一室などロケーションをつくること、誰でも簡単に野菜を育てられるためのナビゲーションシステム、それと持続可能性のある土とタネ。この3つのアップデートが必要だったんです。

レガシーであればあるほど、1つをアップデートすればいいのではなく、それに関連する複数のことを一気にアップデートしなければいけないですよね。
VUILDさんでいうと、それがショップボットであったり、エマーフであったり、クリエーションできる人であったり。そういう人たちが三位一体になってアップデートできる、という感じですね。

秋吉:そうですね、まさに一緒ですね。
民主化というと、自由にオープンにアクセスできる、という意味が大きいんじゃないかなと思います。これは専門家じゃないとできないとか、これは道具を持っていないとできないとか。自分の意志さえあれば、誰でもアクセスができて自由に物作りができることが、民主化だと思います。
そういうことができるように、インフラやプラットフォームなど、インキュベーションが必要なんじゃないかと思っていますね。

芹澤:テクノロジーの下支えが伸びていくと、実は誰でもできるという時代がきていますね。

突き詰めると、民主化とは、自由に人が生きること。グリッドに縛られて生きるのではなく、オフグリッドに生きられるということですよね。

まれびと=共同体の外部からやってきて、強烈に異質な体験をもたらす来訪者

Photo Takumi Ota

芹澤:『まれびとの家』を、友人のfacebookで拝見しました。
朝起きたときの木洩れ日が、すごくきれいですね。

秋吉:『まれびとの家』は、目的地を作るというコンセプトで作りました。
民主化とは、場所に依存しないというのも大きいと思っています。
『まれびとの家』の周りには都市的流通から外れたいわばへき地ですが、こんな場所でも建築ができてしまうという事の証明として実施に取り組みました。

芹澤:オフグリッドな建築様式に、オフグリッドな野菜の栽培様式が相まってくると、社会はどのように変わっていくと感じますか?

秋吉:植物も移動できるということになってきて、いろんなタネとか、おいしそうな野菜を育てながら、育てながら旅をするとかもできますね。例えば、富山でもらったタネを育てて、その野菜を長野で交換したり。植物の流動性も、人間の流動性によって、変わっていく。虫が花粉を運ぶように、タネや植物の物々交換ができるとおもしろいかな。ただの思い付きですけど(笑)。

芹澤:いやいや、それ、かなりキーポイントです!
日本橋を起点に参勤交代で人が往来した東海道では、その昔、お土産として野菜を持ち帰る、という風習があったんです。例えば、練馬の大根は、西のほうが原種で、それが練馬にわたってその地で進化をしたというカルチャーがあります。人の流動性とタネの流動性、ひいては野菜・食の流動性と、そこから生まれたカルチャーの流動性って、実は紐づいているんです。

秋吉:へえ、おもしろいですね。

民主化することで見えてくる未来

芹澤:衣食住が完全にオフグリッドして流動性が出たら、どういう未来が来るのでしょうか?

秋吉:特に地方部は、その土地に人が居たことでカルチャーってできていますよね。だから日本人には、お祭りなどの農耕から生まれた祭事がカルチャーとして残っている。そしてその文化を、農業をやっていなかった人、踊りとか芸能をやっていた人、流動性のある人が、伝播していったという歴史の話を聞いたことがあります。

仕事はオンラインでできる今、“文化”に対する価値観の違う人たちが、新しい土地で、“地”の文化とどう出会うか。 “地”の土から生まれたカルチャーのある場所へ、都心部で働く人が流動すると思うので、クリエイティブなカルチャーをそこに生み落としていくと思うんです。例えば、“地”の文化と組み合わさって、農業のアイデアや考えが生まれるとか。

『まれびとの家』も、“地”の場所作りと、デジタルファブリケーションといったグローバルなものを対話させて考えていったんです。それで、新しいものが生まれたらいいなと。

芹澤:なるほど!
“進化はカオスの縁に起こる”と言われますが、ローカライズされたカルチャーと、流動しているイノベーティブなカルチャーがクロスすることによって、
今までとは全く違うクリエイティビティを発揮したカルチャーが生まれる。
めちゃくちゃ楽しみな未来ですね!!

PROFILE
秋吉浩気(あきよし・こうき)
アーキテクト・メタアーキテクト
1988年生まれ。VUILD株式会社代表取締役CEO。建築設計・デザインエンジニアリング・ソーシャルデザインなど、モノからコトまで幅広いデザイン領域をカバーする。2019年、「まれびとの家」にてUnder 35 Architects exhibition Gold Medal賞を受賞。