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[イベントレポート]珍しい種類の野菜をその場で味見できる。都心のビル屋上で野菜を収穫、付近のレストランで料理してもらう“Farm to Table”体験

grow official
2020-05-29

恵比寿駅から徒歩5分のビル屋上で、野菜の収穫体験

自分の手で畑から収穫した野菜を食べる。さらに、その野菜が新鮮な間に、レストランで料理してもらえたらーー。そんな体験が、都心のビル屋上で実現しました。

PLANTIO(プランティオ)株式会社が3月8日、渋谷区恵比寿の恵比寿プライムスクエア屋上にて、“Farm to Table体験”ができるイベントを開催。

プランティオが運営する、IoT化された農園“grow FIELD”のひとつ「grow FIELD EBISU PRIME」にて野菜を収穫。中目黒のレストラン「ビストロニョニャ」へ移動して、新鮮な野菜を料理研究家の石井秀代さんに料理してもらうイベントです。

■目次

●恵比寿駅から徒歩5分のビル屋上で、野菜の収穫体験
●普段目にすることのない、貴重な「固定種」に数多く触れられる
●無農薬なので植わっている野菜をその場で味見できる
●採りたて野菜でつくる南イタリアの郷土料理「ミネストラ・マリタータ」
●日本とヨーロッパのダシの違いとは──料理の過程を見てレシピを学ぶ
●料理したらどんな味になるのかを想像するのが楽しかった──参加者の感想

当日の朝10時。あいにくの雨模様となるも、参加者5名とスタッフ4名が会場に集合。イベントの段取りを説明しつつ、野菜の収穫に取りかかります。

普段目にすることのない、貴重な「固定種」に数多く触れられる

この畑には数多くの固定種(※)が植わっているので、それぞれの種類の説明を聞きながら、参加者たちが次々と野菜を採っていきます。

※固定種
多くの株のなかから、品種の特徴がよく現れた株を選抜してタネを採り、栽培を繰り返すことで出来上がった品種を「固定種」という。そのうち、特定の地方で栽培・継承されてきた品種を「在来種」と呼ぶ。栽培する地域の名前をとって「○○野菜」「○○伝統野菜」と呼ばれる。

黄色い花がついているのは、奈良県で受け継がれてきた、「早生今市かぶ(わせいまいちかぶ)」。かつて奈良市今市町でよく栽培されていた品種で、実は葉っぱの方が栄養価が高く、根っこだけでなく、葉っぱも柔らかくておいしいので、「葉カブ」として利用されることも多い。

黄色い雨ガッパを着た少年がシャベルで掘ろうとしているのは、石倉一本太ねぎ(いしくらいっぽんふとねぎ)。昭和初期に群馬県前橋市で育成され、品質を保持されてきた品種で、収穫までの1年ほどかかるため、家庭菜園で育てるには少し難易度が高いとされています。

とても柔かくて甘みが強いため、スーパーでよくみかける種類とは違った味わいが楽しめます。生で薬味として使うとさわやかな辛みと渋みがあり、火を通すとトロリと甘くなる。この日は鍋の煮込み料理に使用されたため、このネギが料理の味の決め手になりました。

採った野菜はその場で水洗い。レストランに着いたらすぐに料理に取りかかれるように、土を落としておきます。

大勢で収穫し、野菜がどんどん積み上がっていく。数が多いので、土を落とす人手が足りなくなる場面もありました。

無農薬なので植わっている野菜をその場で味見できる

grow FIELD EBISU PRIMEでは、野菜が無農薬で育てられているため、植わっている野菜をその場で食べてみることが可能です。早生今市かぶやイタリア原産の菜の花「チーマディラーパ」、ベビーリーフなどをその場で味わってみたなかで、参加者たちの反応が最も大きかったのは、「日本ほうれん草」でした。

現在一般的に流通しているホウレンソウは、明治以降に欧米から伝わったものですが、これは江戸期時代から栽培されてきた、唯一の東洋系ホウレンソウです。

アクが少なくて、生でもおいしく食べられるのが特徴。寒いほど糖分を蓄えて甘みが増す赤い根っこは、調味料を使わずとも味がしっかり感じられます。

その場で食べてみた人たちは「甘くておいしい!」「味が濃い!」と絶賛。もし野菜嫌いの人がいれば、まず食べてみてほしい。これまで食べてきた野菜とは、きっと違う感想を抱くはず。そんなふうに思える味でした。

料理研究家の石井秀代さん。イタリア・トスカーナ州でオリーブオイルソムリエの認定を受けるなど、ヨーロッパの料理に造詣が深い。テレビや雑誌出演のほか、Jリーグやなでしこジャパンなどアスリートの自主トレ専属シェフ、「デロンギ・キッチン」公式アンバサダー、企業の商品開発やコンサルティングなど、幅広い分野で活躍している。

石井さんは、採った野菜をその場で食べられるメリットについて、こう解説します。

「普段みなさんが口にする野菜は、収穫と流通を経て店頭に並んでいます。基本的に、野菜を採ってから時間が経つほど、どんどん味と香りが抜けていってしまう。近くに直売所がある人はラッキーですが、それでも、採って数時間は経過したものがほとんどのはずです。

でも、この畑では無農薬で野菜を栽培しているので、その場でぱくっと口に入れることができます。素材の味がそのまま楽しめるので、野菜の旨味をしっかりと感じられる。私自身、こんな体験をしたのは田舎のおばあちゃんの畑以来なので、とても楽しかったです。

そんな体験が、都会のどまん中でできるのは、とても素敵なことだと思います」

また、固定種の野菜が多く栽培されていることについて「珍しい品種が多い」と驚きをあらわに。料理人の目線からも、素敵な環境であると語ってくれました。

「日本ではなかなかお目にかかれない品種がたくさんあるので、料理人から見て、とても創造性が刺激される環境です。チーマディラーパは葉っぱを炒めてスープにしたり、前菜の飾りやサラダに使ったりしますが、その場で食べたのは初めて。花ってこんなに旨味と甘みがあるのかと驚きました。

普段使っている食材は、あらかじめ葉っぱや根っこが切り落とされた状態で出荷されていますが、本来野菜には捨てるべき部分なんかありません。少し出っ張ったひげ根でも、一緒に煮込めばおいしくなるし、食べているときに出てきても、『さっき切ったひげ根が出てきた!』って楽しい思い出になると思います。

普段なら捨てちゃう部分も含めて、どう活かすべきかを考えるのは、とてもおもしろい体験だと思いますね」

約1時間ほどで、収穫タイムは終了。収穫した野菜を持って記念撮影をして、少しだけタネまきをしてから、レストランへ移動します。

今回は、「バターナッツスカッシュ」(カボチャの一種)と「ボルケーゼトマト」のタネをまきました。

野菜を収穫して終わり…となってしまえば、世界の生活・消費サイクルのなかで考えると、結局はスーパーで野菜を買うのと同じになってしまう。そこで、野菜を採ったぶん、タネを植えることで、ただ消費するのではなく生産の一部を担うことになります。

そこで、プランティオのイベントでは参加者のみなさんに生産の一部を体験していただくため、タネまきの時間を設けています。

採りたて野菜でつくる南イタリアの郷土料理「ミネストラ・マリタータ」

野菜を採ってタネを植えた後は、中目黒駅から徒歩約8分のレストラン、ビストロニョニャに移動。参加者のみなさんが収穫した野菜を使って、料理研究家の石井さんが料理を開始します。

写真左から、京都薬味大根、石倉一本太ねぎ、チーマディラーパ

イタリアのトスカーナ州でオリーブオイルソムリエに認定され、イタリア料理の造詣が深い彼女がこの日つくったのは、南イタリア・プーリア州の郷土料理「ミネストラ・マリタータ」。

冬になると大鍋でたくさん煮込んで毎日食べ続ける家庭料理で、「ミネストラ」とはイタリア語でスープ、「マリタータ」は結婚やマリアージュを意味します。たっぷりの野菜の旨味が混ざり合う、滋味深い伝統料理です。

イタリア料理というと、トマトやパプリカやバジリコといった夏野菜、チーズや魚介といったイメージが強いですが、野菜の色が抜けるほど煮込んだグリーンの料理もよく食べられているといいます。

料理のレシピやつくる際の注意ポイントを記載した資料を見ながら、料理の過程を説明してもらいます。

日本とヨーロッパのダシの違いとは──料理の過程を見てレシピを学ぶ

調理しながら、それぞれの食材の特性を解説。鰹節や昆布でダシをとるのが一般的な日本とは違い、ヨーロッパでは野菜でダシをとることが多いといいます。その際に重要なのが、ネギなどの根野菜。

スープの味の決め手になるネギやニンジン、セロリといった根野菜を入れないと、味がぼんやりしてしまうとか。その点、この日は畑で採った太いネギがあったことで、「おいしいスープができるはずです」と用意した素材に太鼓判を押す石井さん。

日本でつくられるスープは、野菜の食感を残すために煮込みすぎないことが多い一方で、くたくたになるまで炒めて野菜を煮るのが、イタリアのスープだといいます。

まずはニンニクをオリーブオイルと炒めるところから料理がスタート。これがイタリアのスープのベースであり、一気に火を入れて焦がさないように、冷たいフライパンや鍋に入れてから炒め始めるのがポイントです。

にんにくとオリーブオイルを炒めて、いい香りがしてきたところで、次々と素材を入れていきます。

ネギやホウレンソウ、カブを入れて火を通すことで、しなしなになっていきます。

豚肉やローリエ、チーズのかけらを入れて、さらに味を重ねていく。家で簡単につくりたいときは、コンソメのもとを入れて、簡略化してもいいそうです。

「好きな野菜をたくさん入れて、長い時間煮込むだけ。簡単でしょう?」(石井さん)

「たくさん具が入っているというより、くたくたになって野菜がとろけるスープ」だという説明どおり、野菜の色がスープに染み出てきました。普段は1時間以上煮込むことが多いそうですが、今回はイベントということもあり、30分ほど煮込みます。

最後にイタリアの白米(写真左)と、小麦の古代種「スペルト小麦」(写真右)を投入。

これで、ミネストラ・マリタータのリゾットが完成しました。

この日配られたレシピは10人分の量でしたが、石井さんいわく「最低でも5人分はつくるのがオススメ」とのこと。その理由は、鍋料理はたくさんの量で煮込んだほうが味がいいことに加えて、おいしすぎて、絶対に足りなくなるからなんだとか。

つくりすぎたら冷凍すれば味が落ちないので、何日も食べ続けることができる。なるべく多めにつくるのがおすすめです。

チーマディラーパの葉っぱを載せて、胡椒とチーズを振りかけて、お皿に盛り付けます。

そのほかにも、参加者がチーマディラーパの花で飾り付けをした前菜。

ビストロニョニャの定番人気メニューのキッシュとラザニアがテーブルに並びます。

最後に、採りたて野菜の素材の味を活かしたルッコラとベビーリーフのサラダでメニューが出揃いました。

料理が揃ったところで、ワインで乾杯!

料理したらどんな味になるのかを想像するのが楽しかったーー参加者の感想

参加者のみなさんにイベントを振り返ってもらうと、

「恵比寿のプライムスクエアには行ったことがあったけど、あんな場所に畑があるとは驚きました。景色もいいし、土いじりするのも楽しそうです」

「野菜を採ってる間も、味見をしながら、料理したらどんな味になるのかを想像するのが楽しかったです」

「スーパーで買った野菜より、クセがない。ルッコラがこんなさらっと食べれるのかと驚いたし、畑でその場で食べられるのは新鮮な体験でした」

といった畑に関する感想に加えて、

「サラダがすごくおいしい。ドレッシングのスパイスで食べるわけじゃなくて、野菜のおいしさが活かされているのがいいですね」

「これで4000円は安い!」

「食べるだけならレストランに来ればよかったけど、自分で収穫したことで、食べるときに『ああ、あそこで採った野菜だ』って思いを馳せられるのがいい」

といった、野菜の味や収穫して食べる“Farm to table”体験についての感想もありました。

デザートは石井さん特製のビーガンチョコレート。

現在はコロナウイルスの影響でなかなかイベント開催が難しい状況ではありますが、機を見て、こういったgrow FIELDと飲食店のコラボが再開できるようになったら、またぜひ多くの方に参加していただきたいです。

(終わり)

参考文献:野口勲著「固定種野菜の種と育て方」(創森社)

編集=森ユースケ

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PLANTIOはサブスクリプション型のIoTシェアファーム「grow FIELD」を運営しているほか、新プロダクトのIoTプランター「grow HOME」のリリース(予約開始は8月、発送は9月)を予定しています。

また、4月にリリースしたウェブサービス「grow SAHRE」では、ご自宅のベランダや街の中にあるコミュニティファームなど、野菜づくりの場所「vege SPOT」(ベジスポット)を地図上に登録できます。栽培に関する情報交換、おすそ分けやボランティア募集など、野菜づくりにまつわるコミュニケーションのハブとしてお使いいただけます。

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