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「ナスってこんなに甘いの…?」都心のビル屋上で野菜やハーブを収穫、その場で味わうイベント「ナイトファーム」

grow official
2019-09-21

日本から消えつつある、「江戸東京野菜」の存在を知ってほしい。そして、採りたてならではのおいしさを知ってもらいたい ── 。そんな思いから8月30日、プランティオがイベント「ナイト・ファーム〜恵比寿の都市農園で野菜・ハーブの収穫&カクテル・フィンガーフード作りを楽しむ〜」を開催した。

内容はいたってシンプル。自身の手で畑から野菜を収穫して、その場で調理をして、食べる。またはハーブを採って、カクテルに添えるだけ。採りたてだけに味は格別で、自分の手で採った実感が加わり、さらなるおいしさを感じることができる。 …と、ここまで読むと、郊外の畑で行われるイベントのように感じるが、開催場所は東京都・恵比寿駅から徒歩5分、都会のビルの屋上のファームなのだ。

江戸前てんぷらの由来とは

この日のイベント「ナイト・ファーム」の会場は、プランティオが運営する“コミュニティファーム”のひとつ、「サスティナパーク恵比寿プライム」。恵比寿駅近くのオフィスビルの屋上にある農園だ。建物の下から見ただけでは、この上に農園があるとはにわかに信じがたい。階段を登ると、約80平米の農園が目に入る。

イベント「ナイトファーム」開催中のサスティナパーク恵比寿プライム

イベント開始時刻の18時を過ぎ、徐々に日が落ちた頃、仕事を終えた参加者たちが続々と集まってくる。農園の脇には、採れたてのハーブを使ってカクテルを作るためのドリンクがずらり。さらに、建物の下には、採れたて野菜を調理するためのキッチンワゴンカーが停まっていた。用意された調理法は素揚げと茹でるの二択のみ。生でも食べられる新鮮な野菜だけに、調理法はシンプルなほうが良い。

プランティオ代表の芹澤孝悦さんは、このイベントの狙いをこう語る。

「現在はビルが多い東京23区でも、昔は農地が多く、江戸時代から1960年ごろまでは、多くの古来種が伝統的に栽培されてきました。ところが、東京における農地縮小などの問題によって、『江戸東京野菜』が消えつつあります。まずは、その存在を知ってほしいと考えています。

そして江戸時代には、採った野菜を畑の近くで素揚げして食べる人が多かった。それが江戸前天ぷらの由来だといわれています。参加者のみなさんに、恵比寿で育てている江戸野菜を、江戸前天ぷらとして食べていただきたいという思いで、このイベントを開催したんです」

自分の手で採ったナスを素揚げして実食

参加者が野菜を調理して食べる様子を撮影するべくワゴンの前で待機していると、一番乗りは、ナスを手にした男性だった。

キッチンワゴンカーに乗り込み、調理を開始。

ナスをざく切りにして、油で素揚げすること約2分。 ぱちぱちと少し乾いた音が聞こえてきたら、オリーブオイルと塩をかけて、完成だ。

揚げたてのナスを口にした男性は「おいしい!でも、ナスってこんなに甘かったっけ…?」と首をかしげつつ、「自分で採った野菜を食べるのって、楽しいですね」と満足げだった。

少しわけてもらったところ、口に入った瞬間にとけるような食感に驚いた。普段口にする、スーパーで買ったナスは、「もきゅっ」とした食感の印象が強い。この甘さと柔らかさは、採れたてならではなのだろう。

プランティオ代表の芹澤さんいわく、「かつて恵比寿で伝統的に栽培されていたのは、賀茂ナスのようなまん丸のナスだった」とか。江戸野菜の江戸前天ぷらの再現を企むこのイベントで、最初に調理されたのがこのナスの素揚げであったことは、なにか運命的なものを感じてしまう。

屋上の農園に戻ると、参加者たちが和気あいあいと野菜をもぐ姿が見られた。

ハサミを入れて、ナズとズッキーニを収穫した後はキッチンワゴンカーに向かって、調理して、実食だ。

それぞれ少しずつ分けてもらったところ、ズッキーニもパプリカも、みずみずしさと甘さが格別。「野菜は採れたてがおいしい」と頭ではわかっていたが、実際に食べてみることで、その違いにあらためて気づく。

この後も多くの参加者が、ナスやズッキーニ、パプリカやネギを持ってワゴンの前に並び、イベント終了まで常に盛況な様子だった。

自分の手よりも大きなズッキーニを収穫した女性
ナスとネギ、パプリカ、ズッキーニを収穫

採りたてハーブのカクテルで乾杯

野菜だけでなく、ハーブをもいでカクテルを作る楽しみもある。

この日いちばん多く飲まれたのは、4種類のハーブ(ゼラニウム、レモングラス、レモンバーベナ、フェンネル)を漬け込んだウォッカに、採れたてレモンとハーブを入れて飲むカクテルだ。

ミントや

グラスにたっぷりと氷を入れて、ハーブ酒とソーダ水を注ぎ、レモンを絞る。さらに、その場で採ったミントを載せて、一口飲んでみる。ミントの香りが広がるとともに、漬け込んだハーブの風味とレモンが合わさった、さわやかな口当たりだ。

ビルの屋上で飲む開放感もあいまって、清々しい気分に。仕事帰りに一杯、家の帰り道でこんな体験ができたら、幸せだろう。そんなことを考えながら、グラスを傾けた。

バーカウンターの後ろに用意されたスピーカーから流れるムーディーな音楽を聞きながら、お酒を飲み、楽しく談笑する参加者たち。

仕事帰りに立ち寄った人がほとんどで、「こんな場所が、家や会社の近くにあったらちょこちょこ通いたいかも」「こんな場所で、友達とBBQできたら楽しそう」と話す人もおり、参加者たちの満足度は高いように感じられた。

採れたて野菜とハーブを堪能し、イベントは終了。出口では、帰り際に野菜の種が配られていた。

この種を配った理由について、プランティオ代表の芹澤さんは「農のサイクルに加わってほしいため」だと語る。

「高度経済成長時代に野菜が“工業製品”になってしまったことで、かつて身近だった農と人々の生活が、分断されてしまいました。現在我々がスーパーで野菜を買うことは、種を植えて、育てて、収穫するというサイクルから、いわば搾取しているだけとも考えられます。

収穫してその場で食べて、種を植えることでこのサイクルに参加する。そんなアクションを促進をするためにも、次回のイベントからは、食べたその場で種を植えるようにしたいです」

野菜をその場で採って、食べる。そして、種を植えて育てる。都心に“コミュニティファーム”が増えることで、多くの人が、家や職場の近くで農のサイクルに参加しやすい環境が増えていくのかもしれない。そんな未来の芽が感じられるイベントであった。

編集=森ユースケ

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