【イベントレポート】恵比寿屋上農園プログラム『Sustainable Food tour&Table to Farm in Ebisu~恵比寿からサスティナブルの種を蒔こう~』
8月3日(土)に恵比寿屋上農園プログラム『Sustainable Food tour&Table to Farm in Ebisu~恵比寿からサスティナブルの種を蒔こう~』の最終回が開催されました。
イベント詳細はこちら。
ナビゲーターは西麻布にあるイタリアンレストラン「エルバ ダ ナカヒガシ」の中東俊文シェフと日本食文化研究料理家もりおかまりこ氏。
「エルバ ダ ナカヒガシ」はシェフみずから旬の山菜を収穫して提供するレストランです。今回のイベントもそんな中東シェフらしく、参加者と畑で野菜やハーブを収穫し、一緒に料理して美味しくいただきます。
およそ5時間にわたる贅沢なフードアクティビティは、笑いあり、感動あり「農」を通して人と人がつながって、これからの未来につながっていくことを強く感じられるイベントでした。
土曜の朝8時30分:屋上菜園サスティナパーク恵比寿で野菜やハーブを収穫!


朝にも関わらず、灼熱の太陽が照りつける中、収穫は始まりました。


「おはようございます!」
電車が遅れていたり、徐々に集まる参加者の表情はどこかまだぎこちなく、探り探りの様相。お互いどこにいていいのかわからないような、シャイな空気感でした。

この日が初めての参加となった方からは
「都会のど真ん中、恵比寿の農園でどんな野菜が採れるのか」
「果たして屋上菜園の野菜は美味しいのか」
おっかなびっくりの空気が伝わります。
ナビゲーターの中東シェフはプロフィールで見るよりも気さくな方でした。
参加者みんなが収穫に参加できるように
「賀茂茄子を収穫したい人~?ハーブを収穫したい人~?」
などと参加者の壁を元気に壊していき、少人数のグループを作ってどんどん収穫をしていきます。



みなさん汗をぬぐいながら、
「普段土いじりをあまりしてこなかったので楽しいです」
「ビルの屋上でもこんなに育つんですね!」
「これはなんですか?」
とどんどん積極的になります。

イベントの内容的に女性の方ばかりかと思いきや、男性の参加者もたくさんいらっしゃいました。
様々なバッググラウンドの方がいる中で、参加者同士の自己紹介をせずに収穫が始まったため、萎縮することなくまるで学生時代のサークルのようにフラットで和気藹々とした雰囲気が心地よかったです。

参加者と話してみると、もともと10年ほど前からレンタル菜園をしていた方、農業に携わっている方、エネルギー関係のお仕事をされている方、食に携わっている方、中東シェフのレストランにたまたまご飯を食べに行ってイベントを知った方など、野菜や食べることが大好きな様々なバッググラウンドを持つ方々でした。
全4回のうち1回は台風接近でやむなく中止になってしまいましたが、自由参加の中、3回皆勤の参加者は「今回も本当に楽しみです」と瞳をキラキラさせて語っていました。
もともとお友達同士で参加されている方やお一人でご参加された方、近所にお住みの方からアメリカ在住の方もおり、イベントの注目の高さがうかがえました。
恵比寿サスティナパークで3月に種を蒔いて育てている
・賀茂茄子
・夕顔
・フトナガトウガラシ
・ハーブ
などを収穫しました。
聞いたことのない名前ばかりでワクワクしました。




収穫した野菜を実際に食べてみよう!クッキングイベント
午後のクッキングイベントは三部制。
クッキングイベントとトークライブの中で、実際の料理体験、意見シェアなど知識のインプットからアウトプットまでを一貫して行うことができました。
よくある「ただイベントに参加しただけ」でなく、しっかり自分の生活に落とし込める内容で、美味しい野菜を味わいながら参加者同士でお話ができる素敵な場となりました。

体験や情報のインプットだけではなく、個々のアウトプットを参加者全員で共有できたことでより一体感のあるイベントになりました。

第一部) サスティナブルクッキングライブ


クッキングライブでは、中東シェフと一緒に皮も根っこも捨てずに使い切る料理にチャレンジしました。
中東シェフは、市場に流通している育てやすい「F1種」という種類ではなく、古来から存在する「伝統野菜」の中でも東京近郊で採れる江戸野菜を主に料理に使用しています。
伝統野菜について詳しくはこちら。


中東シェフが大切にしている考え方、「身土不二(しんどふに)」、「一物全体(いちぶつぜんたい)」をコンセプトにその土地で収穫した作物をその場で丸ごと食べる美味しさを体験することができるとても貴重な機会でした。
※「身土不二(しんどふに)」…人間(身)と環境(土)はバラバラではなく、身体は環境から様々なものを取り入れているという意味。
※「一物全体(いちぶつぜんたい)」…皮も根っこも余す事なく使い切るの考え方。

シェフが一方的に料理をして教えるスタイルではなく、
「野菜を洗うことに自信がある人!」
「目が合わないからお願いします」
と野菜を洗ったり切ったり、料理の過程で参加者から得意な方を募ったり、無作為に指名されるスタイルでした。
結果、参加者が料理に参加でき、当事者意識と仲間意識が芽生える構成でした。










第二部) サスティナブルトークライブ

第二部では、「食から変えられるサスティナブルな未来」というテーマで、もりおかまりこ氏によるトークライブが開催されました。
「毎日の何気無い生活の中に取り入れられるサスティナブルな生き方・考え方を考える」というコンセプトで今の日本の農作物の現状や実際にご自身が屋上菜園を体験して見た経験をシェアしていただきました。
日本の食料自給率は38%(2017年度農林水産省調べ)。
「その中で『規格外』として廃棄されている食料は何割くらいだと思いますか?」
もりおかさんの問いかけに会場では「4割」と「6割」に挙手する方が多く、市場に出回る食料が少ないであろうという認識を皆さんお持ちでした。
日本では大量生産に適している「F1種」の農作物を生産しているものの食料自給率が38%にも関わらず、さらに生産された農作物のうちの4割が「規格外品」という、形や大きさが「規格外」で廃棄されている産業廃棄物となっています。
農業だけでなく、漁業でも同様に。小さすぎる魚などは食べられるにも関わらず「規格外」として廃棄されています。
もりおかさんは「屋上菜園を始め、自分で野菜を育てるようになってみて、夕顔のようにびっくりするほど大きくなるものや、いろんなサイズ、傷がある野菜が育つ姿を見て、かわいいなと思った」と語り参加者からは「うん、うん」と強く頷く参加者の姿が見受けられました。

本当はいろんなサイズや傷があっても食べられるのに、スーパーに出荷するとなると綺麗で色が良くて形が良いもの以外は捨てられてしまう…。
屋上菜園で自分で育ててみると植物は本当にいろんな形に育つし、形が悪かったり傷があっても収穫してすぐに食べればアクも少なく、美味しくいただけました。
「現状はこれでいいのか」参加者は各々物思いにふけっていました。
第三部) 「今日から出来る!食からサスティナブルな未来を作る私の宣言」

第三部では第二部までを踏まえ、参加者全員が「今日から出来る!食からサスティナブルな未来を作る私の宣言」を発表しました。



他にもご自身の仕事や食以外の生活も振り返り、「サスティナブルなエネルギーを使う」「ビルに農園を作る」「サスティナブルな商品を買う」「ものを大切に扱う」など、消費者としてサスティナブルな会社、商品を選び、使い切るという宣言が出ました。
そして、信頼できる人と繋がって本当のこと、大切なことをありのままに伝えていくことの大切さがサスティナブルな社会に「繋がる」ことをイベントを通して学びました。


イベント参加者は屋上菜園の会員になることができ、イベント終了後もアグリライフを楽しむ仲間と繋がり続けることができます。
この日した宣言の進捗をお互いに確認し合えたり、情報交換もできる仲間ができたことも大きな収穫となりました。
まとめ

「家庭菜園」ではどちらかというとご家庭や一人で完結してしまいがちですが、「屋上菜園」はひとつの畑を家族以外のみんなでシェアするので人とのつながりも広がっていきます。
例えば会社の休み時間やちょっと近くを通りかかった時に「ハーブを摘んでハーブティーを作ろう」ということが気軽にできたり、灼熱の東京の屋上で植物が育つことにより、農園がない屋上より気温の上昇を抑えることができます。
ひとりだとなかなか続かなかったり、うまくいかない時にどうしたらいいかわからないこともありますが、みんなで育てればきっと解決策も導き出せるはず。
「サスティナブル=持続可能な」社会は、まず一人一人の小さな心がけから実現していきます。
PLANTIOでは今後もレストラン・食に興味のある人、畑を触ったことがない人も気軽に参加できる「みんなで育ててみんなで食べる企画」を参加者と一緒に作り、コミュニティーを広げられるイベントを開催していきます。
「屋上菜園」を通して気の合う仲間も探してみてはいかがでしょうか。
「ちょっと気になる」だけでも大歓迎なのでぜひ実際に体験されてみてください。
屋上菜園の詳細はこちら。
PROFILE
Reika Narishima
ライター。銀座の百貨店での営業、イベント運営を経て2017年に単身世界一周、仲間を見つけてアメリカ横断を達成。写真と文章で「世界の情報を日本に伝え、日本の情報を世界に伝える」発信活動中。目標は世界197カ国制覇とミニマリストになること。 「なんでも経験してみること」をモットーに、牧場での住み込みバイトや農泊、ラトビア短期移住、通信系コンサル会社での経験を活かし、環境への配慮や人生をよりよくする方法を模索中。